2015.6.20「モンゴルと日本の家事事件」講演会

2015.6.20「モンゴルと日本の家事事件」と題して、モンゴル・日本人材開発センター(国立大学)との共催で講演会(第67回日本センター市民講座)を行いました。モンゴル・日本両国の実務家・研究者・学生など30人が参加しました。

●ウルジーフー協会理事長の講演「モンゴルの家事事件とその留意点」概要

・結婚というのは男女が任意に国家機関で婚姻する届けをして登録されること

・最近はモンゴルでは婚姻したが、婚姻に伴って生じる責任・義務を理解していないことで様々な問題が生じている

・最近、離婚率は増加している。理由として、夫婦の信頼関係喪失、家族に関する教育、家族を作るための考え方・計画が整っていないなどいろいろある

・その離婚に至るまでは夫婦のコミュニケーションが悪化している状況。家族を作るための教育とは、相手の言葉を聞く、相手をどのように尊敬してコミュニケーションを日常的に取るかといったこと。毎日文句を言って夫や妻をうんざりさせるなど、問題が生じている。

・いろいろな問題があるので、家族は、コミュニケーションがもっとも重要。相互に話を聞いて分かち合うことが重要

・離婚するとなった場合、モンゴルでは2つの基本的方法で離婚できる

・行政手続による離婚。18歳までの子がいない、共有財産について対立がない、夫婦の合意が条件。届出後30日以内に離婚がなされる

・裁判離婚。行政手続による離婚以外のケースで双方が離婚を申し出。一方が離婚しないと言っている場合もこれに含まれる

・裁判で離婚させない場合。1歳までの子がいる、妊娠している、相手方が重病の3つの場合

・裁判所に訴える際には訴状を裁判所に提出。訴状の条件として、訴える裁判所、原告氏名など。管轄は被告住所地。離婚理由を記載して、証拠があれば添付する。訴訟手数料も支払う

・訴状に書く請求。共有財産に関して紛争があれば、それを解決したいと書く。親権や養育費についても記載すべき

・裁判所に提出すべき書類として、婚姻登録の書類、子が正常に成長している証明書など

・裁判所で離婚させる場合、調停が前置主義になっている。しかし、家族について家庭内暴力などがあれば、直接裁判所に訴訟提起できる

・裁判所での調停は、夫婦を円満になされる目的で行われる。裁判所と異なる点、証拠書類は不要で、3万MNTの手数料のみ

・調停で夫婦を円満にさせることができなかった場合、裁判所で審理される

・裁判官がさらに和解の余地があるとみなした場合、3か月以内の期間を定めて調停に回すことができる

・訴状中でDVを記載しているが、裁判になってからその事実が証明されなかった場合、裁判官が調停に回すようにしている

・訴訟から調停に回した3か月以内に、夫婦が円満になれない場合には、判離婚判決を出す

 ・外国に定住しているモンゴル人、モンゴル人が外国人と離婚した場合、モンゴルの国際条約に違反しない限り、離婚が有効とされる

・子の養育費の金額、最低額は、11歳までの子について、当該地域に確定された最低賃金の50%、1116歳または労働能力のない子については最低賃金の養育費が支払われる

・給与以外に収入源がない被告から養育費を支払わせる場合、養育費として1か月の給与その他の収入の50%を超過してはいけない

・夫婦の相互扶養金額については、その地域の最低賃金を下回ることはできない

・裁判所から養育費を決定した場合、子の養育費を金銭で支払うことも、その他の財産で支払うこともできる。期間としては毎月支払うことも四半期、半年、1年という支払い方法も可能。当事者で子が18歳になるまではと合意して、一括して1回で支払うこともできる。つまり支払期間について当事者は自由に決められる

・養育費を被告の給与から出させること、共有財産の被告分割部分から支払わせることもできる

・子の養育費について、被告の給与の50%を超えた場合、裁判所から誤った養育費を支払わせるような決定が出された場合、養育費支払者は、裁判所に訴訟提起して金額を再確定させることができる

・養育費を支払わなかった場合の責任追及方法、当事者が契約で合意した場合損害賠償させることができる。

・裁判所判決で決められた期間内に養育費の支払いがない場合、1日あたり0.5%の割合の延滞料を支払わせることができる。延滞料の総額は養育費の50%を超えてはいけない

・離婚の主な原因はなんでしょうか。裁判離婚をする場合にするべき基本的準備について、短いですが情報提供しました